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17/04/02

【ツール・ド・とちぎ2017】最終ステージ:人の心を熱くする走りで

レース名 : ツール・ド・とちぎ 第3(最終)ステージ
カテゴリー : UCI アジアツアー 2.2
開催地 : 矢板市〜宇都宮市
開催日 : 2017年4月2日(日)
距離 : 99.6km
平均時速:42.8km/h

All photos: Hideaki Takagi



ツール・ド・とちぎ、最終ステージ。ブリヂストン アンカー サイクリングチーム、今日の最高成績は、鈴木龍の5位。順位で言えば昨日と変わりませんが、その内容は、全く異なっていました。

チーム選手を始めスタッフが自ら認めることは決してありませんが、BGTチームならではのスタイルである『人の心を熱くする』走り、その言葉をそのまま体現できたのです。



(ダミアン・モニエ)


3日間を締めくくる最終ステージ、パレード走行の後のリアルスタートが切られたその直後の上りでダミアン・モニエが飛び出します。

ジロ・デ・イタリアでのステージ優勝もしたことがあるダミアンの登りスピードに数名の選手が付いてきますが、ダミアンがさらにスピードを上げると千切れていきます。そこに実は上りも得意な西薗良太が合流し、序盤の揺さぶりを担います。



(鈴木龍)


序盤のスピードアップに集団もやっと反応し、捉えるも、そこに鈴木龍がさらに飛び出します。その飛び出した鈴木にキナンサイクリングチームの2選手が反応、3名で走っていると、そこに西薗が再び上がり、BGTとKIN、2名づつの構成となりレースを引っ張ります。



(先頭:鈴木龍、後方:西薗良太)


その4名はじきに集団に吸収されましたが、そこに次は初山翔がアタックを仕掛けます。その初山が吸収されると、こんどは再び鈴木が前に出る。その鈴木に初山が加わり、35km地点まで先頭を2名で引きます。



(前:鈴木龍、後:初山翔)


このツール・ド・とちぎでは、3ステージ全てにおいて、インターネットでのライブ中継も行われておりました。その解説者たちは、BGTチームの度重なる積極的な攻撃に対し、最初のうちは冷静な分析を行っていましたが、徐々に「今日のブリヂストン アンカーにはやる気が見える」といった内容のコメントを混じえ始めます。

そしてコースの半分、50kmほどの地点で、今日のBGTの、いえ今日のレースそのものを象徴する逃げが決まります。


石橋学です。



アタッキ・チーム・グストが集団をまとめ上げコントロールしようとし、他のチームもそれに迎合するさなか、突如石橋は、ふとしたスキにひとりで前にでて、集団との距離を一気に開きます。速度を上げながら、いくたびも後方を見ますが、誰も石橋に付いてこようとはしません。

「他のチームは誰も同調してくれず、ひとりで行くべきかどうか迷いましたが、行くしかないなと思いました」



そして石橋は行きます。単独で、独特のハンドルポジションを取り(空気抵抗が軽減されますが、相当に上半身の筋力が必要なポジションだそうです)、そのままペースを挙げました。ひとりで走る石橋と、集団との距離も開き続けます。

改めて。
ロードバイクで集団ではなく1人で走り続けると、とてつもなく消耗します。集団走行であれば、風を避け、スリップストリームに入り、先頭交代をしながら体力を温存できるものですが、単独走行ではすべてをひとりで受けるのです。

解説の今中大介氏によると、「ひとりで走る力が100であれば、集団の中にいる選手は50程度の力で同じ速度で走れる」そう。



その単独走を、石橋は続けます。集団がその気になれば、石橋はすぐに吸収されるだろう。見ている人は誰もがそう思ったのでしょうが、残り25km、残り15km、石橋は独走します。集団との差は、最大で1分50秒開きます。追走する集団は、縦一列にならんでいます。これは相当なスピードであることを意味します。

このあたりから、解説者のコメントに、こんな言葉が混じり始めます。

このまま行くんじゃないか。くじけない心、強靭な筋力、素晴らしい逃げ。UCIカテゴリー2.2のレースで。行って欲しい。石橋選手、最後まで行ってくれ。



残すところ8km、石橋の後ろに、ついに集団が見え始めました。「普通ならここで諦めるでしょう、でも石橋は、まだ諦めずに踏み続けています」。解説者は言います。しかしながら残り5km、石橋は集団に吸収されました。予想されていたことではあったのですが、それは、45kmの独走の後にやっと、「残念ながら」現実となりました。

石橋のまさに一人舞台を終えた後、レースは休息に終盤へ向かいます。石橋の想いを受け取ったBGTチームは、ピュアスプリンターである大久保陣に勝負を託し、彼を西薗、鈴木の順で引き加速させ、そして優勝ゴールへと飛び込ませる、そんな完璧なシナリオを描いていました。



(先頭:大久保陣)


ところがゴール前200m付近で、一部選手がミスコース。先導車両の誘導用矢印を読み違えたとのことですが、スプリント体制直前にて、集団は大きく崩れます。

大久保はそのコースミスに流されてしまい、スプリント集団から完全にアウト。混沌としたゴールスプリントの中、鈴木がなんとか着を狙って仕掛けますが、崩れた計算式を取り戻すことは叶わず、5位という結果に終わりました。



砂を噛むような気持ちを抱いた昨日のステージと同じ、5位です。しかし繰り返しますが、その内容は、全く違っておりました。

「選手たちは全力で、自分たちがなすべきことをしましたが、今日こそ『歯車が噛み合わなかった』という感じですね。いわゆる『熱い走り』はできたかもしれませんが、やはり成績につながらない限りNGなので、そこは残念でした。選手たちも残念に思っています。ただ、現状のコンディションでは最高の走りでした」(水谷監督)


ブリヂストン アンカー サイクリングチームの選手たちは、今日の結果には全く満足していません。監督の言う通り、レースでは結果こそが全てだからです。

しかしその結果を超える何かを、今日のBGTチームは、明らかに示すことができました。それは解説者の言葉として表されただけではなく、今日このレースを見ていた方々の心にも、言葉にならない想いとして伝わっているはずです。

これが、ブリヂストン アンカー サイクリングチームの走りです。


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私たち、ブリヂストン アンカー サイクリングチームは、常に勝利を目指して走ります。それが結果として残せなかったとしても、あなたの心を熱くする走りでありたいと願っています。なぜなら、それこそが私たちのスタイルであり、存在意義でもあるからです。


そして、終わってみれば素晴らしいレース運営だったという感想ばかりが聞かれた、ツール・ド・とちぎ。その栄えある第1回目の最終ステージで、記録こそ残せませんでしたが、記憶に残るような走りができたことを、チームは誇りに思います。


次こそ、記憶だけでなく、記録も残します。
私たちにはその自信があり、実績があります。

昨年の全日本選手権での私たちの走りと結果、これを思い出してみてください。


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【リザルト】
ツール・ド・とちぎ 第3(最終)ステージ
2017/4/3 3rd Stage Yaita - Utsunomiya

1 エゴイツ・フェルナンデス・アヤルサグエナ (チーム右京) 2:19:34
2 畑中勇介 (チーム右京) +0:00
3 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト) +0:00
5 鈴木龍 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +0:00
31 西薗良太 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +0:00
46 ダミアン・モニエ (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +0:24
47 初山翔 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +0:28
54 大久保陣 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +1:28
59 石橋学 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +1:51


【総合成績 GC 最終ステージ後】

1 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト) 6:59:02
2 ジャイ・クロフォード (キナンサイクリングチーム) +0:14
3 鈴木譲 (宇都宮ブリッツェン) +0:19
9 鈴木龍 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +1:28
12 西薗良太 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +1:28
45 初山翔 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +4:46
47 大久保陣 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +4:49
50 石橋学 (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +5:12
58 ダミアン・モニエ (ブリヂストン アンカー サイクリングチーム) +6:08


【チーム総合成績】
1 キナンサイクリングチーム 21:01:15
5 ブリヂストン アンカー サイクリングチーム +1:30