contents

17/05/03

【チームより、堀孝明へ】プロサイクリストにとって骨折とは:ひとつのチャンスである

「プロサイクリストにとって、骨折とは」。これは不幸なことなのか、あるいは幸なのか。
この深遠なるテーマの題材が、ブリヂストン アンカー サイクリングチームを訪ねてきます。

いま骨折をして、10〜15%の痛みを体で、残りの85-90%の痛みを心で受け止めているプロサイクリスト、それがBGTチームの堀孝明です。


今年にチーム入りした堀。シーズン初頭のクロアチア連戦に出場しましたが、そのクライマーとしての脚質を発揮しきれずにレースを終えます。その後のツール・ド・とちぎを休み、海外初のステージレースとなったツール・ドゥ・ロワレシェールの第1ステージ、4月12日。

まさに今日から本格的なレースシーズンを迎えようというその日に、集団落車に巻き込まれ転倒、左腕を骨折しました。

「転倒の瞬間を僕自信は覚えていないのですが、チームメイトに聞くと、レースの100km地点ぐらいで、自分がいたよりも前の集団が落車で急ブレーキをかけギュッと縮まり、そこに突っ込んだといいます」

手首には2つの骨が通っています。橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)といい、その2本の骨が旋回しながら、肘先から手首にかける動きを作りだしていきます。堀の左腕は、その2本の骨が共に折れていました。堀は、今の気持ちを率直に語ります。

「すごく悔しいです。それだけで頭がいっぱいです。チームメイトはこの間にも、フランスでトレーニングを重ね、ヨーロッパでレースを走っているかと思うと。。。」

手術から3週間たち、手術後の傷口もふさがり、やっと抜釘の時期となりました。

「ただ、それを切り替えていかなくてはいけない。幸い脚は元気に動くので、怪我前よりも強くなれるように、トレーニングを重ねるのみだと思っています。この機会に、しっかりとギアを掛け、パワーを付けるトレーニングを積もうと思っています」

手首にまだ荷重はかけられないため、タイムトライアル用のハンドルに腕全体を置くポジションで、ローラーを回す堀。


「手術後の傷口が塞がるまでは、おとなしくしていましたが、やっと日に2時間程度、ローラー台を踏めるようになりました。やるべきことを一つ一つ行い、弱点を克服していきます。いま、時間はありますので、この時間を『武器』に変えられるように、基礎から体を作り上げていきます」

とあるスポーツ整形の名医と言われる医師は、こう言いました。「多くのスポーツ選手にとって、骨折とは、自身を高めるチャンスです」。これまでの症例と、その復帰例を診てきた多くの経験からの言葉です。

プロスポーツ選手に限らず、骨折などの怪我とはつまり、自身と向き合うチャンスです。
『健康というものに甘んじた惰性』、あるいはそういった生活様式そのものを見直せる、大きな機会なのです。

「6月中旬の復帰を目指しています。全日本選手権には、出場するつもりです」

堀も、治癒までの時間を武器に変えられるとチームは信じています。
己を磨き上げ、復帰後にさらに強くなり、全日本選手権連覇のための『武器』となる。これが今の堀に託されたブリヂストン アンカー サイクリングチーム員としての使命です。