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17/04/11

【ダミアン・モニエに聞きました】「プロサイクリストにとって、骨折とは」


Photo: Hideaki Takagi


ブリヂストン アンカー サイクリングチーム、そのチーム全体の重鎮とも言える存在のダミアン・モニエ。フランス人である彼は、今年でBGTチーム5年目です。

2010年にはジロ・デ・イタリアのステージ優勝も成し遂げているダミアンの経験と知識は、言葉の壁もあってか、その走り以上に表に出ることは多くありません。
たしかにレース現場では、必要以上に多く語らないダミアンではあります。しかし、一度口を開けばその含蓄は常に深く、エスプリに富んだものです。



2016年 年末


昨年は、シーズン後半に鎖骨を骨折。せっかく訪れた『センセーション』に溢れた走りを味わいつくせずに(こちらの記事をご一読ください)シーズンを離脱したダミアンは、怪我から復帰してのシーズンインを、どんな心境で過ごしたのでしょう。

ダミアンに話を聞きました。途中から主題は「プロサイクリストにとって、骨折とは」に変わっていきました。レポートなどでは「落車を喫し骨折、リタイアした」などという一言で片付けられてしまうことが多い、骨折という大怪我。プロサイクリストにとって、骨折とは、一体どういう意味を持つのでしょう。ダミアンが、その経験を振りかえります。


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Photo: (c) Tour de Filipinas


僕にとって14度目となる今シーズン、なかなかいい調子で始まったよ。冬の間の準備もうまくいったしね。いつもよりも早めにまとめ上げることができたよ。というのも、去年の10月に鎖骨を折って、シーズンが早めに終わっちゃったからね。。。まあ、プロライダーとして、できることはきちんとするってことだよね。

フィリピンでのレース、そしてクロアチアのレースはうまく行った。自分を信じて、何度かいい逃げも決められたし。この走りの感じでいくと、ツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・アゼルバイジャン、ツール・ド・コリア、この3レースは、とにかく待ちきれないとしか言いようがないな。

今年のBGTチームは、半分以上が新しいメンバーになった。シーズンインの前には、この半分が新しいっていうチームがどう動けるのか、ちょっと怖くもあったんだよね。チームのレベルというものをね、冷静に見てね。

でも今のところ、心配したようなこともはぜんぜんなく、いい感じに進んでいる。新顔ライダーたちが、すぐに溶け込んで行く様子が見て取れたよ。沖縄のシーズン前合宿ではモチベーションは相当上がってたし、トレーニングもすごく熱心だった。

この感じはレースでも一緒だね。みんな積極的に前に出ていったし、最高の走りを見せてくれていた。これからのシーズンも、間違いなく問題ないと思うよ。

去年の骨折からの復帰について? そうだね、その話をしようか。

サイクリストが骨折するっていうのは、『ただ骨を折った』ってことだけじゃないんだよ。物理的な痛みじゃないんだ。

落車して骨折したとき、最初の2分間は、その痛みを感じ、それにどう対処するか考えるだろ。これは誰も一緒だ。でもそこからが違う。失われていく時間とのタイムトライアルが始まる。自転車に乗れない期間、それをどうしても目の前に突きつけられてしまう。

平均的なことを言うと、乗れない期間は2〜3週間、そこから体を動くように戻すまでにだいたい1ヶ月ぐらいは掛かる。その間に考えるのは、どうやったら、いち早く元のカラダに、コンディションに戻せるのか、ということばかり。。。シーズンは待ってくれない、ただ過ぎていくんだ。

毎日、毎日、自分に言い聞かせる。落車の前にあったコンディションはすべて失われてしまっている。これをまた、すべて積み上げていくんだ、って。同時に、次のプロ契約についての、そして成績が残せないことについての心配が常に心に常に浮んでくる。

あるいは、去年の僕のように、最高のコンディションを味わい楽しみ尽くせなかったことに、腹を立て続ける。。。。去年の僕にはいろんな目標があったんだ、鎖骨を折る前にはさ。本当に残念だったよ。

Photo: Deabong Kim

もっと昔の個人的な経験を話そうか。2012年の1月、チームCOFIDISで走っていたとき、シーズン直前に落車したんだ。

ひどい落車だった。顔を何か所も骨折した。眼窩、アゴ、鼻、歯、頭部外傷とそして1時間の記憶喪失。。。本当に痛かったよ、本当に。3日間で手術を2回も受けたぐらいだよ。

でも頭は回り続ける。「このあと一体どうなるんだろう。。。今シーズンは。。。これからのキャリアは。。。」その年の契約のうちに、僕はなんとしてでも結果を残さなくちゃいけなかった。

「1ヶ月半は入院を」と医者に伝えられたとき、「そんなの無理だ」と言い返した。

手術後5日目には病院の回りを歩くことから始め、その次の2日間は病院の階段を、5階分、30分間をかけて登ったり、下ったりを繰り返した。そして8日後には、『病院は承諾しない』という契約書にサインをしてなんとか退院し、10日後にはローラー台に乗っていたんだよね。。。

この時、家に戻ってローラー台に乗ったときの嬉しさ、そして安心感。これを言葉で説明することはできないな。始まるべきシーズンに、戻れたことが本当に嬉しかった。もう時間をムダにすることはないとも思ったんだ。

なんか話がいろいろそれちゃったね。でもまあ、まとめると、サイクリストにとって骨折ってのは、肉体的にというより精神的に大きな痛みなんだ。体の痛みなんてものは、事故の10〜15%ぐらいのもの。残りの85-90%は、「心配」なんだね。


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昨年を振り返れば、ブリヂストン アンカー サイクリングチームには、同じく鎖骨を骨折したMTBライダーの沢田時がいます。沢田は、怪我から3ヶ月かけて復帰し、日本の誰よりも速く、強くなりました。

プロサイクリストにとって、骨折とは。近く沢田にも、その話を聞いてみたいと思います。